仏像知識を再学習!写仏な精細イラストで学び直し

仏像の歴史を再履修

仏像に会いにいくようになって、はや幾年…

お寺で、博物館で、たくさんの仏像に出会って歴史と背景を見聞きし、見仏歴を重ねてきた、その一方で!

長年のインプットかけ流し(と加齢)によって、古い記憶が薄れたり、知識がごちゃついたり、曖昧になってしまっているという事実。これは否めない。


部屋の中、乱雑に置かれた本や雑貨を、それぞれ適した棚にしまい込むように、仏像の知識を一度スッキリ整理したい!学び直したい!

という、常日頃の仏像知識に関する私的お悩みにマッチした1冊。

『芸大の先生に教わる仏像の歴史』(淡交社)
  著者: 礪波恵昭, イラスト: 真船きょうこ
  装幀: 阿部美樹子

著者は、京都市立芸術大学美術学部教授の礪波恵昭さんと、ベストセラーコミックエッセイ『仏像に恋して』でおなじみの漫画家・真船きょうこさん。真船さんは、礪波先生の元教え子! 先生の授業の面白さを本にしたい、という思いから生まれた本なんだそう。
わたしも『仏像えほん』制作では、学生時代の恩師・肥田路美先生にお世話になったこともあり、湧き出す親近感。

構成としては、仏像の誕生から始まり、飛鳥、奈良、平安…と歴史的背景を追いながら、仏像の特徴を解説していくという、ベーシックでわかりやすい形。要素として、ここにカラー高精細イラスト、時代ごとの章終わりに「マンガでわかる」シリーズあり。

「形式」と「様式」、どう違うの?

しょっぱな冒頭で説明される仏像の「形式」と「様式」の違いが、わたしの中では、最大のスッキリと言っても過言ではなくて。

形式とは、簡単に言うと仏像を形作る際の決まり・約束事のことです。(中略)それに対して様式とは、形式を守った上で表れてくる、地域・時代・作者などによって異なっている特徴のことです。(中略)同じ形式の仏像でも、時代や作者が異なれば、様式は異なってくるのです。

『芸大の先生に教わる仏像の歴史』8Pより引用

恥ずかしながら、美術史専修卒なのに、もう、この基本のところも「そういえばそういう概念あったような気がします」くらいのはるか遠い記憶。
なんなら、一般的な口語として「形式」と「様式」を似たようなワードとして、ごちゃ混ぜに使ってしまっていることもあると思う(カテゴリーによっても形式、様式は変わる)。

ちなみに、我が家の本棚にあった手近な仏像解説本を5、6冊見てみたのだけど、この違いについて触れている本はないようだった。想像するに、

  1. 研究者・専門家の方々にとっては当たり前すぎる概念ゆえに触れない 
  2. 一般的には難しく響きやすい用語なので使わない 

のどちらかだったりするのかしら。

個人的には、仏像の知識を整理していくための超基本的なフレームを用意してもらえたような感じがして、ありがたかった。
ここらへんが「芸大の先生に教わる」ところなんだろうし、少しアカデミックな「タグ」を脳内に新しく迎え直す感覚も気持ちよく思えた。

写真じゃない!? 写仏イラスト

そして、なんといっても本書を手に取って目を奪われるのは、めちゃんこリアルに描き込まれた仏像のイラスト!イラストを担当した真船さんが、「写仏の思いで描きました」とおっしゃってる通り、真摯に仏像と向き合って描き出したことが一目で伝わる。しかも、写真じゃないからこそ抽出されている仏像の雰囲気、伝わる細部があって。見応えがすごい。「そうこれだよ、この感じ!」という。

なんだろう、ちょっとミラクルひかるが真似るYOUみたいな。物真似の方が、YOU(という共通概念?)度高いというか。本人とは似て非なるなんだけど、芯を捉えていて。

はい、ミラクルひかるさん大好きなんですけれど。なに言ってるかわからない方は、読み飛ばしてください。

特に、見応えのカロリー(?)が高い&好き!と思ったイラストは、法隆寺金堂の釈迦三尊像(86P)、観心寺の如意輪観音菩薩坐像(119P)、東大寺阿弥陀如来立像(178P)など。薬師寺の薬師三尊、神護寺のお薬師さんなど、他の写仏イラストのパワーもすごいので、ぜひお手に取ってみてください。

 

※以下、著者の真船さんにご連絡&ご許可いただいたので、写真掲載させていただきます!

 

勝手に!個人的に写仏度がすごい!と思ったベスト3。法隆寺金堂の光背含めた三尊…!

ベスト2。快慶仏の顔、表情。すごい写仏感です。

ベスト1。すごく好きな仏像なんですが、わたしの脳内イメージのそれ、だった。

 

マンガでつかんで知識定着

その写仏イラストとはガラリとタッチが変わるのが、各章の最後に掲載されているマンガページ。真船さんの従来のほのぼのタッチで、マンガならではのカジュアルな読み口となっている。章の内容を振り返る形で、整理された知識を定着させるようなコーナーとなっている。
学生に混じって、授業に出席する真船さん楽しそう。お姿を知らない礪波先生のシンプルな描かれ方も愛おしい。

読書後半、何の気なしに、先に章末のまとめマンガに目を通してから章のテキストを読んだところ、この読み方もなかなか掴みやすかったので、参考まで。

カバーを取ると、モノクロシックなデザイン

 

同じ「写実」の名の元に、異なる写実様式を展開した奈良と鎌倉。技法の進化と様式が結びついた平安。それぞれの時代背景など、読了してだいぶ仏像知識の棚が整理できた感あり。
「歴史で習ったけど、仏像のこともう少し学んでみたい」「仏像を観には行ってるけど、知識を整理したい」といった、仏像カテゴリーに一歩踏み込みたい勢におすすめの仏像解説本

2025年は、国宝の仏像展示が目白押しイヤーなので、学び直し需要も多いはず。気になる方はぜひ、写仏カラーイラスト群(各所に添えられたモノクロのイラストもわかりやすい)に圧倒されながら、仏像知識を深めるが吉!